家事事件
遺産分割、遺言、相続、離婚、養育費、成年後見など※この他にも多数の事例があります
家事調停
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相続・遺産分割
祖父が亡くなりました。私はアパート建築の借金を引き継ぐのでしょうか。(相談の概要)
先日,祖父が亡くなったのですが,四十九日の法事のあと,おばさんから,「この書類(遺産分割協議書)に印鑑を押してね。それから印鑑証明書も準備して。」と言われました(私の父は若い時に事故で亡くなっていました。)。祖父は,亡くなる前ころ,おばさんから勧められていくつかのアパートを建てていたのですが,そのアパートがすべておばさんのものになると書かれています。私たちの住んでいる家も祖父名義だったのですが,それは私たちのものになると書かれています。私は,アパート建築の時に億単位の借金があると祖父から聞かされていたので,「アパートの借金もおばさんが負担するのでは大変ですね。」と言ったところ,「税理士に聞いたところだと,借金は相続人全員で払うことになるのよ。あなたの負担は,2200万円。」と言われました。私は,将来にわたってアパート収入をおばさんが得られるのに,おばさんの借金の負担が軽くなるのはおかしいとその税理士に質問しましたが,「相続税がかからないんだから,仕方ないでしょう。」と言って取り合ってくれません。
(事案の処理と解決)
1 ご相談の事案では,祖父が死亡した場合,あなたが相続人の一人になります(代襲相続といいます。)。形式的には,亡くなった祖父(被相続人と呼びます。)の借金は,相続の開始と同時に,法定相続分に従って当然に分割された割合で,あなたが負担する結論になります。
2 あなたが居住している家を,祖父から相続する必要がないのであれば,家庭裁判所で「相続放棄」の手続を取れば,上記の借金の負担はゼロになります。しかし,居住している家を引き継がないわけにはいかず,今回のケースでは,相続放棄による解決はとれません。
3 そこで,遺産分割調停を申し立てました。プラスの財産であるアパートを希望通りおばさんが取得すると,法定相続分よりも相当程度多額の財産を引き継ぐことになり,「代償金」を支払うことで公平に解決する必要に迫られることを調停で主張しました。代償金の額は2000万円を超える見込みでした。
おばさんとしては代償金を払う意思がないという主張でした(経済力はあります。)。しかし,審判になれば代償金の負担は免れない状況です。この事案の全体の解決という観点で,「アパートの負債を全部おばさんが引き継いでもらえるのならば,代償金はいらない。」という当方の主張をしました。おばさんは,アパートの借金2200万円を払うように求めてきましたが,当方としては,代償金を払ってくれれば負債の負担部分を払ってもよいと主張しました。
4 結果として,アパートだけでなく,その負債もすべておばさんが引き継ぐという内容の調停が成立し,相談者は借金を引き継ぐことなく,居住不動産を確保することができました(相続税を心配する方があるかもしれませんが,相続財産全体を通算するとマイナスでしたから相続税はかかりません。)。